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梅
鴬
立春
価格を更新した短冊の一覧をご覧いただけます。
みなさまにもなじみの深い作者の自筆短冊をご紹介します。
No.004993
井上 円了
( いのうえ えんりょう )
任運 運命の風にまかせて世の海を 渡る人こそ心安けれ 甫水
日本が開国と文明開化に沸いた明治時代、この国の近代化にとって重要なのは、一人一人のものの見方や考え方を育てる学問・哲学であると主張し、東洋大学の前身である哲学館を創設するなど、その普及に尽力した人物が井上円了です。
円了は、生活習慣などが変化しても、依然として世間に根強く残る「迷信」や「妖怪」といった民間伝承を研究し、『妖怪学講義』などを発表。それらの不可思議な現象を論理的に説明することは、日本人特有の思考の解明や、科学の発展に寄与することだと考えました。
そうした努力が実を結び、「お化け博士」や「妖怪博士」などの名で人々に親しまれた円了ですが、そんな彼にとって、「科学」や「哲学」を持ち込んでもなお解き明かせない主題の一つが、「運命」という不思議であったのかもしれません。全国を巡講しながら社会教育に努め、教学施設への寄付の返礼として、自らの書を贈呈していたという円了。その遺墨もまた、今なお多くの人々に親しまれています。
No.004992
井伊 直弼
( いい なおすけ )
鴬の来なかぬ春のうらみさへ わすれて今日の初音うれしき 彦根老
これほどまでに鶯の鳴く声を待ち望んでいたのかと思われる、微笑ましい歌です。この歌の作者が、あの「桜田門外の変」で命を落とした井伊直弼であればこそ、より微笑ましく、そして哀しく感じるのかもしれません。
幕末の動乱の中、国が大きく変わろうとしている只中で、大老として安政の大獄など独裁政治ともいわれる判断を下した直弼。その人生の早すぎる晩年は、彦根藩主の息子の一人として生まれながら、300俵拾扶持の部屋住みとして過ごし、自らを花の咲くことのない埋もれ木に例え、「埋木舎(うもれぎや)」と名付けた邸宅で世捨て人のように暮らしていた頃とは、余りにもかけ離れたものといえるでしょう。しかし、たとえ埋もれ木の生活の中であっても、その技芸は国学や茶道・和歌・鼓、槍・居合術など実に多才であり、成すべき事をしてきた聡明さが伺えます。
直弼は、後に彦根藩第15代藩主となり、藩政改革を行い名君と呼ばれました。また江戸城では、将軍継嗣問題と日米修好通商条約調印問題をめぐり存在感を示していきました。安政の大獄の後は「井伊の赤鬼」とまで呼ばれた彼の、別の一面を垣間見る一句といえるでしょう。
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